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水仙棚田 2006/01/30 MON(No.1017)

少し大きな画像は「お散歩デジカメ・ブログ版」で。
 携帯の目覚ましで6時に目覚めた。車の屋根を雨が叩いている。天気予報が大当たりだ。今回、わざわざ伊根に寄り道したのは、越前海岸にある梨子ヶ平(なしがたいら)の棚田への通り道からさほど離れていないということもあるが、新井(にい)の棚田でどうしても撮ってみたい写真のイメージがあったからなのだ。それは、新井集落の子どもたちが、棚田の中の道を3キロほど離れた伊根の小学校に集団登校する場面。このイメージがかれこれ1年ばかりボクの頭の中に住み着いていて、どうしても撮らないと決まりがつかない状態になっていたのである。
 ところが、とんでもない事態がボクを待ち受けいた。そのお陰で、子どもたちの撮影どころか、下手をすれば命まで失いかねなかった大事件だ。
 車中泊した道の駅から新井の集落までは、いったん国道に出て、そちらから入る道が表である。でも、海岸線を通る裏道があることは、去年ここに来たときに分っていた。集落から伊根の街中に通うにはその道が最短距離になる。ということは、この道が子どもたちの登校路である可能性が高いと踏んで、下見がてらそっちから棚田に入ろうと考えた。一応、小型の車なら2台がすれ違えるぐらいの道幅があるし、ちゃんと舗装もしてある。なにも問題はないはずであった。
 ところが、その道の途中で落石に直撃されたのである。左側は切り立った崖、右側は海に落ちる崖という道で、しかもくねくねと曲がりくねっていて見通しがほとんどきかない。ガードレールもあったりなかったりという具合なので、スピードは20キロから30キロ程度ののろのろだった。それが命を救うことになるとは、直前まで思ってもみなかった。
 左側でゴツッという大音響がしたと思ったら、いきなり車が左から押されるようなショックがきた。とたんにハンドルを取られ、急ブレーキをかけて止まったところは、前輪があと10センチで右側の崖に落ちるという寸前だった。最初はなにが起こったのか、呆然としていて分らなかったが、しかし、車を降りてみたら、ちょうどボクが通ったあたりにビール樽ほどの岩が落ちている。もちろん、前にはなかったものだ。それで謎が解けた。崖の上からの落石が、車のすぐ横に落ちてゴロッと転がった駄賃にボクの車にぶつかったのだった。左側の前のドアに明らかにそれと分るでっかいへこみと、引っかかれた深い傷が何本も走っている。岩には塗料の赤い色がへばりついている。まだ3ヶ月の新車である。泣きたくなってしまった。
 でも、受けた被害はへこみとキズだけで、幸いなことに他はなんともない。気を取り直して棚田に向かい、三脚を立てて子どもたちを待つ。待機姿勢に入ったのが7時半ごろ、学校が9時から始業するとして、3キロの道のりを歩くわけだから、その頃には通るはずだ。でも、結論から言うと、子どもたちの影も姿もなく、声さえも聞こえてはこなかった。集落に通じる道3本のうち、2本を見通せる位置で待っていたから、見逃すはずはない。残りの1本、一番距離がある道に行ってしまったのか、あるいは、スクールバスが通っていたのかも知れない。被害アリの無駄足、ついてないったらありゃしないのだ。でも、命が助かっただけでも良しとすべきかな。もしあの岩が車の屋根やフロントガラスに落ちていたら、たぶん今頃は閻魔様の前だ。

 早々に伊根を発ち、まっすぐ越前海岸を目指す。雨の中を5時間、けっこうな道のりだ。途中で雨は止んだけれど、空はどんよりとした厚い雲に覆われていて、まるで夕方のように暗い。まさにイメージ通りの山陰である。
 越前岬のすぐ上にある梨子ヶ平に着いたのは夕方だった。百選にも選ばれているこの棚田は、昔は千枚田と呼ばれていた通り、1000枚を越える田んぼが拓かれていたところだ。急勾配の斜面に、狭い棚田が階段のように耕作されていたという。その棚田の99%が、今は水仙畑に変わってしまっている。越前岬といえば野生の日本水仙で有名なところだが、この棚田ではその野生種が生花用として作られているのだ。田んぼの跡継ぎがだんだんいなくなり、放棄田が増えるとともに、急斜面の崩壊が心配されるようになった。棚田には、斜面に浸み込む水量を調節して、崖崩れを防止する役割もあるのだ。そのため、あまり手がかからずに栽培できる水仙が代替作物として取り上げられたという。
 水仙畑に変わったとは言え、地形は今でも美しい。しかし、ボクにはなぜか悲しい風景に見えて仕方がなかった。これが時代の流れと言ってしまえばそれまでだが、棚田という一つの文化が消えていく背景には、農業軽視と効率至上主義をここに至っても反省しない政治の貧しさがある。ボクが確認しただけでも、消えてしまった百選棚田が4つもある。たぶん、10年後には消えてしまうだろうというところも10ヶ所ではきかない。棚田の取材は、この寂しさとの折り合いをどうつけるかの連続なのである。

 暗くなるまで撮影し、さて、今日の泊まりはと考える前に、一応携帯で天気予報を確認してみた。明日も雨だそうだ。それじゃ粘っても仕方がない。これから帰ることにした。夕食用に買ってあったコンビニ弁当を途中のPAで食べた休憩1回だけで連続8時間運転、へとへとになって午前3時にやっと帰宅した。
大きな写真は ⇒ ブログ版
撮影データ
カメラ

CANON EOS20D
EFs10-22mm USM
撮影日 06/01/30 16:05
ISO感度 200
絞り F5.6
シャッター 1/60
露出補正値 -1/3
WB 屋外
露光方式 絞り優先AE
測光方式 評価測光
合焦方式 スポットAF
焦点距離
(35mm換算)
22mm
(35mm)
その他 手持ち撮影
レタッチソフト ちびスナ


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