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棘 2008/09/04 THU (No.1980） 　ボクのサラリーマン時代の最後は、六本木の某フランス系証券会社東京支社であったが、上層部は仏米英人で占められていたけど、奴隷階級には日本人はもちろん、いろんな国籍の外国人がいて、退社後の付き合いはけっこう面白いものであった。 　まあ、いろんな友達がいたわけだが、その中に喫煙室仲間のルーマニア人がいた。あだ名をドラキュラ（ルーマニアといえばコマネチかドラキュラであろう）と呼ばれていた美男子で、こいつと一緒だと飲み屋のねいちゃんにえらくモテたのであるが、こいつが、それはそれは極端な先端恐怖症だったのである。 　とにかく、尖ったものを見ると体が硬直するぐらい怖がる。恐怖症を英語でphobiaというが、たとえば、高所恐怖症を例に取れば、高いところに上ったら怖いのは誰しもであって、精神疾患として位置づけられるphobiaの場合は、たとえ椅子の上であっても、高いところに上ると平常心を失う。そのような場合を恐怖症と言うのである。 　こいつの先端恐怖症がまさにそれで、こいつと一緒だと寿司屋には行けなかった。板前が握っている包丁が怖いのである。顔は引きつり、体は震える。ひょっとしたら、泡を吹いて倒れるんじゃないかというぐらい重症であった。 　川口グリーンセンターの温室には、サボテンだけを集めた部屋がある。その部屋で、ずいぶん長い間忘れていたそのドラキュラくんのことを、唐突に思い出した。こうして、写真に撮って見てみると、うん、確かに先端恐怖症というphobiaが存在する理由が分かる。 　脱サラ後、サラリーマン時代の友人たちとはとんと没交渉で、果たしてまだ日本にいるのかどうかさえ分からない人たちばかりだし、顔は思い出せても名前が出てこない人や、そもそも、思い出すことすらなくなった人もいる（に違いない）。ドラキュラくんもその中の一人であったが、サボテンのお陰で懐かしく思い出したのであった。 大きな画像はこちら。 購読解除はこちら 全バックナンバーはこちら 「お散歩デジカメ　Premium Edition」 日刊の有料メルマガです。購読料は１ヶ月1,050円。　　　 【主な内容】 １日１枚の参考写真とエッセイ RAW現像やレタッチの技法 撮影技術解説 ネット撮影会の作品と講評、など。 購読申込みはこちら。 購読料はクレジットカードからの 自動引き落としです。 今日のプレミア版 シオン 【内容】 展示作品：通常版「シオン」 エッセイ：お好み焼き 今日のポイント：秋空 撮影会講評：ukiukiさんの作品 「滝滑り」」