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生け花 2008/10/05 SUN (No.2011） 　ボクのモーツァルト狂いに関しては、長い読者ならとっくに承知の輔であろうが、相変わらず、脱却の気配もなく、毎日のようにモーツァルトを聴いている。今も、かれこれ５時間ほど前から、ヘッドホンで鬼嫁が立てる騒音をシャットアウトして、モーツァルトに浸りながらメルマガを書いているのである。 　最近は、ケッヘル496番のピアノトリオト長調に凝っていて、毎日必ず２回は聴く。３楽章で30分近くかかる長編だが、ちょうど円熟期に差し掛かったモーツァルトのエッセンスが、余さず凝縮されたような曲だ。 　ボクの勝手な分類であるが、５歳にして作曲を始めたモーツァルトの作風は、だいたい４つのピリオドで分類できると思う。第一期は５歳から14歳までの10年間で、いわゆる天才少年として欧州各地でもてはやされた時期だ。作曲の技法はまだ勉強段階、初歩的だが、すでにプロとして名を馳せていた作曲家を凌ぐひらめき、諧謔性、深みを発揮している。 　第二期が15歳から、コンスタンツェと結婚する26歳までの青年期。初歩的な段階に留まっていた作曲技法が、この間に長足の進歩を遂げる。対位法が身についたのもこの時期だ。同時に、コンサートで食える身分になって、大衆の好みを意識した曲を作るようになる。つまり、聞き手や演奏者の気分を忖度できるようになるわけだ。 　第三期は26歳から32歳ぐらいまでの６、７年間。ほぼ完璧な円熟期に入る。金もどんどん入ってくる。ハイドンからはこれ以上ないというぐらいの賛辞を受け、まだ若いベートーベンも会いに来る。オペラ「フィガロの結婚」が大ヒット、交響曲もいわゆる三大交響曲と言われる39番、40番、41番が作られる。上に書いたピアノトリオは30歳のときの作品である。 　第四期は32歳から死ぬ35歳までの４年間。この時期になるとモーツァルトは、世間からは時代遅れと見なされるようになり、売れなくなる。一世を風靡したロココ様式が終焉を迎える時期だ。経済的にも困窮し、女房は病気で伏すようになる。 　しかし、それに反比例するように、作風はこの時期から人間の域を超越して「神」的になる。モーツァルト以降の大作曲（だけではなく、あのアインシュタインさえも）が現代に至るまで、こぞって彼を不出生の天才と呼ぶのは、まさにこの時期の作品を誰も超えることができないからなのだ。 　この最後の４年間の作品は、まさに、写真で言う「引き算」の局地だろうとボクは思っている。音楽というものが、どうしてこんなに単純化できるのだろうかと、唖然としてしまうのである。贅肉が限界まで削られて、まさに「音楽」そのものだけが残る。 　ボクがその前の第三期の作品に惹かれるのは、たぶん、ボクの写真がまだモーツァルトの第二期の段階に留まっているからであろう。だが、第三期をやっと遥か彼方に望めるぐらいになったからだと、まあ、自己満足ではあるけれど、思って悦に入っているのである。 大きな画像はこちら。 購読解除はこちら 全バックナンバーはこちら 「お散歩デジカメ　Premium Edition」 日刊の有料メルマガです。購読料は１ヶ月1,050円。　　　 【主な内容】 １日１枚の参考写真とエッセイ RAW現像やレタッチの技法 撮影技術解説 ネット撮影会の作品と講評、など。 購読申込みはこちら。 購読料はクレジットカードからの 自動引き落としです。 今日のプレミア版 罠 【内容】 展示作品：通常版「罠」 エッセイ：大迷惑 今日のポイント：ＡＦの弱点 撮影会講評：ナンさんの作品 「レトロなガラス戸」