このメルマガはHTML形式で配信されており、テキスト形式では画像が表示されません。メールソフトの受信設定をご確認ください。

水たまり 2009/07/03 FRI (No.2281） 　柳田邦男「零戦燃ゆ」全６巻を読み終えた。文庫版で全６巻、ハードカバーだと上中下３巻の大部だ。しかも、内容が濃い。ここまで徹底しないとルポとして成立しないという、まさに見本だ。 　零式戦闘機の誕生から終焉までの６年弱を追ったノンフィクションだ。柳田邦男の著作はその徹底した取材と、問題点を浮き上がらせる文章力に定評があるが、15年をかけたというこの大部に、彼の真骨頂がいかんなく発揮されている。 　全６巻というと、読む前から挫けてしまいそうだが、読み始めたら止まらない。先の大戦の経緯については、多様な書籍がさまざまな角度から詳述しているから、確かに、この６巻の部分部分は、いまさら説明されなくても知っているという範疇であろう。 　けれども、大戦の初めから終わりまでを、零戦という、たった一つの視点から見通したというところに、この作品の価値、面白さがある。戦闘機を作った人間、それを操縦した人間、それを使って作戦を立てた人間、それに対抗するために奮闘した敵側の人間と設計者、それがあったために死んでいった多くの若者たちやその家族、およそ、あらゆる側面から大戦を俯瞰している。 　この作品、実は、親父に先に読んでもらった。90歳の老人であるにもかかわらず、２週間で読了。親父にとっては、まさに実体験である。登場人物の中には、戦友であったり上官であったり、あるいは部下であった実在の人物がたくさん出てくる。酒を酌み交わした翌日には、特攻で未帰還になった知人も多いという。大半は故人である。読みながら、涙が止まる間がなかったそうだ。 　ボクの知人も一人だけだが出てくる。特別攻撃隊の発案者であり、それを推進した大西中将の副官であった人物だ。ボクが初めて就職した会社の社長、後に会長であった。仕えたのは短期間であったが、この人が社長だった期間だけは、その会社がまともであったような記憶がある。温厚で知的な、威張るところがまったくない紳士であった。 　今日は親父の通院日であったから、病院の待合所でこの作品についての感想を語り合ったけれど、親父の一言、「もし日本が零戦という戦闘機を開発できていなかったら、大戦は短期間で終了していただろうし、あれほどの戦死者も出ず、沖縄の悲劇もなく、原爆も落とされることはなかっただろう」という言葉には、体験者ならではのすごい説得力があった。 購読解除はこちら 全バックナンバーはこちら 感想、ご意見などはこちらから。 「お散歩デジカメ　Premium Version」 日刊の有料メルマガ 購読料1,050円（月間）はクレジットカードからの自動引き落としです。 普及版と同様、「一日一枚」ではありますが、 有料だけのことはあるな！ という内容になっとります。 写真が上手になりたい人や、 キットのせいで人生を誤りたい人は 購読して後悔することはありません。 ただし、 購読しなくても後悔することはない 仕組みなので、貧乏な方は ご遠慮いただいた方が よろしかろうと存じます。 メルマガ登録・解除 お散歩デジカメ Premium Version >>  サンプル 詳細ページへ powered by まぐまぐプレミアム 今日のプレミア版 【内容】 展示作品：後出し版「梅雨空」 エッセイ：６年ぶりの夏休み 今日のポイント：休載 ネット撮影会講評：休載 梅雨空