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路傍 2009/08/21 FRI (No.2330） 　雫井脩介の「犯人に告ぐ（上下）」を読んだ。異色の警察小説である。 　主人公巻島史彦は、ノンキャリアながら警視の地位まで登った、いわば叩き上げのエリート警察官である。しかし、とある誘拐殺人事件の捜査を担当していた折、記者会見の席で逆切れしてしまい、キャリアを棒に振ってしまう。逆切れしたには、心臓を患う娘が病院で死に瀕していたことや、上層部の指示が、捜査ミスがありながら、警察に泥を被せないようにせよという厳しいものであったという理由があったのだが、巻島は甘んじて非難を一身に被り、地方署に左遷されていく。 　６年後、別の連続誘拐殺人事件が発生する。手かがりがほとんどなく、犯人に翻弄され続けた警察は、地方署で抜群の成績を収めていた巻島を呼び戻し、起死回生の捜査手段に打って出る。巻島をテレビに連続出演させ、犯人に呼びかけるという形をとった「劇場型捜査」に踏み切るのである。 　この奇想天外な捜査、そして、巻島に浴びせかけられる警察内部や世間からの批判の声、内部からの捜査情報流出、さらには、６年前の犯人の影・・・、捜査は難航し、巻島は窮地に追いこまれるかに見える。しかし、巻島には成算があった・・・。 　息つく間もないストーリー展開である。話自体が現実にはありえない捜査形態を土台にしていることから、下手すれば漫画的なバカバカしさで終わってしまうところだが、作者の文章力と、緻密な取材による警察組織や捜査手法、テレビのニュースショーの世界のリアリズムが基礎にあるから、読んでいて違和感を感じることがない。まるで、現実の捜査を目の当たりにしているような気持ちでストーリーを追うことができる。 　2005年大藪春彦賞受賞、同年本屋大賞7位、2004年度週刊文春「ミステリーベストテン」第1位、2004年度週刊現代「最高に面白い本」第1位、2005年度「このミステリーがすごい!」第8位と、当時の話題を一手にさらった話題作である。ベストセラーになり、映画化もされた。処女作「栄光一途」で第4回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞したものの、あまり知られることがなかった作者を、一躍檜舞台に踊り出させた作品である。 購読解除はこちら 全バックナンバーはこちら 感想、ご意見などはこちらから。 「お散歩デジカメ　Premium Version」 日刊の有料メルマガ 購読料1,050円（月間）はクレジットカードからの自動引き落としです。 普及版と同様、「一日一枚」ではありますが、 有料だけのことはあるな！ という内容になっとります。 写真が上手になりたい人や、 キットのせいで人生を誤りたい人は 購読して後悔することはありません。 メルマガ登録・解除 お散歩デジカメ Premium Version >>  サンプル 詳細ページへ powered by まぐまぐプレミアム 今日のプレミア版 【内容】 展示作品：通常版「青いグラス」 エッセイ：農機の修理完了 今日のポイント：安易に流れる ネット撮影会講評：休載 青いグラス