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コンビニ 2009/09/02 WED (No.2342） 　肌身離さずが言い過ぎではないぐらい、いつも持ち歩いているものがある。カメラと本である。 　カメラはメシのタネではあるが、必ずしも商売道具だから持って歩くわけではなく、もちろん、口寂しいときのチューインガムのように、手持無沙汰だから持っているわけでもない。サラリーマン時代の最後の方、脱サラが気持ちの中で膨れ上がってきていた時期に、写真家になるという選択肢がだんだん形を取り始め、訓練も兼ねて常時撮影態勢を心がけるようになったその頃からの癖である。メルマガを出し始めた６年前からは、そうしないとノルマが消化できないということで、余計にカメラが手離せなくなった。 　本の方は、もう思い出せないぐらい昔から。大学生の当時には、すでに本の虫に成熟してしまっていた記憶がある。中高生の時分、親父から「勉強しろ」とうるさく言われるのがうるさくて、とにかく机に向かってさえいれば親の眼をごまかすことができるという理由から、読書と楽譜書きが人間性維持のための必須行動だったのだ。 　で、今も、さすがに風呂には持って入らないけれど、トイレには持参する。早メシ早グソは兵隊の規範第一条という信念から、トイレタイムはきわめて短いのだが、それでも10ページか15ページは読まないとクソが出ない。 　ボクの場合、本の良し悪し、面白いかつまらんかは、出だしの10ページぐらいでなんとなく分かる。今朝の10ページは、ほぼ完璧にボクを捕まえた。午前中の雑用、午後のお仕事の間中、続きが読みたくてうずうずしていたのだ。夕方、タバコを買いに駅前まで行ったときに、とうとう我慢できなくなって喫茶店に入り、続きを最後まで読んだ。出だしで感じたとおり、面白さの余り途中で止められなくなって、晩飯に遅刻する有様であった。 　荻原浩「コールドゲーム」である。この作家の本は、2005年本屋大賞２位、山本周五郎賞受賞の「明日の記憶」が渡辺謙主演で映画化されて話題になったときから、一度は読んでみたいと思っていたのだ。たまたま本屋で見つけて購入したのが「コールドゲーム」だった。 　渡辺光也高３の夏、復讐劇が突然幕を開ける。中２のときのクラスメートが、次々に襲われるという事件が勃発したのだ。当時、クラス全体のイジメの対象だったトロ吉の犯行である疑いが濃い。しかし、転校していったトロ吉の行方は誰も知らない。 　イジメの主犯格であった亮太、今はヤクザ見習いみたいな生活を送っている幼馴染から、光也はトロ吉を探し出すよう説得される。だが、トロ吉の所在は容易に掴めない。そうするうちに、犯行は徐々に残忍さを増し、ついには級友の一人が殺害されてしまう。 　物語は最初から倒錯している。イジメの加害者であった亮太や光也たちが正義であり、被害者トロ吉が悪なのだ。しかし、読者はトロ吉に限りなく同情せざるを得ない。イジメの手段の残酷さが、逐一描写されるからだ。復讐される級友が増えるたびに、トロ吉がんばれと応援したくなるのである。だが、反面、光也の言い分に納得する自分もいる。 　果たして、この復讐劇はいかなる終幕を迎えるのか。真実のやるせなさに心を痛めつつ、最後には驚愕の幕引きが待っている。非常に複雑な読後感が心に植え付けられる。と同時に、ページをめくる興奮に酔う楽しさを、余すところなく体験させてくれるミステリーだ。 （キット評価：★★★★★） 購読解除はこちら 全バックナンバーはこちら 感想、ご意見などはこちらから。 「お散歩デジカメ　Premium Version」 日刊の有料メルマガ 購読料1,050円（月間）はクレジットカードからの自動引き落としです。 普及版と同様、「一日一枚」ではありますが、 有料だけのことはあるな！ という内容になっとります。 写真が上手になりたい人や、 キットのせいで人生を誤りたい人は 購読して後悔することはありません。 メルマガ登録・解除 お散歩デジカメ Premium Version >>  サンプル 詳細ページへ powered by まぐまぐプレミアム 今日のプレミア版 【内容】 展示作品：通常版「光の中へ」 エッセイ：百姓のＤＮＡ 今日のポイント：ラチチュード ネット撮影会講評：k_tsubakiさんの作品 「カメラマン」 光の中へ