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花フェンス 2009/11/06 FRI(No.2407)


 久しぶりに書評。10月26日に「絶対音感」を書いて以来だから、11日ぶりということになる。
 その11日間で7冊読んだ。後藤正治「スカウト」、黒川博行「切断」、生出寿「反戦大将井上茂美 icon[キット評価:★★★☆☆]」、荻原浩「神様からひと言」、佐藤正午「ジャンプ」、多岐川恭「駈落ち icon[キット評価:★★★☆☆]」「練塀小路の悪党ども icon[キット評価:★★☆☆☆]」である。ボクなりの評価が高い順にランクをつけるとしたら、「ジャンプ」⇒「スカウト」⇒「神様からひと言」⇒「切断」⇒「駈落ち」⇒「反戦大将井上茂美」⇒「練塀小路の悪党ども」となろうか。
 佐藤正午については、83年に「永遠の1/2」ですばる文学賞を受賞し、その作品が大竹しのぶ主演で映画化されたぐらいの知識しかなかった。もちろん、作品を読むのは初めてだったのだが、この「ジャンプ」、期待を大いに裏切る秀作であった。個人的な評価では、なにかでっかい文学賞でも贈ってやりたいぐらいだ。
 「5分で戻ってくる」と言い置いて、深夜、近くのコンビニに買い物に出かけた恋人が、そのまま失踪してしまう。いくら考えても、姿を消す理由に思い当たるところがない。物語はそこからスタートし、事件に巻き込まれたのか、それとも自主的な家出なのかを巡って、彼氏の捜索は二転三転する。5年後に辿りついた真実とはいったいなんだったのか、息も継がせずといった感じで読まされてしまった。
 「スカウト」は、文字通りプロ野球のスカウトを扱ったノンフィクション。弱小球団、セリーグのお荷物と蔑まれていた広島カープのスカウトとして、後のセリーグ優勝に至る人材を発掘し続けた名物スカウト木庭教を中心に、プロ野球を陰で支えるスカウトという職業を追っている。
 著者の後藤正治については言うまでもなかろう。潮ノンフィクション賞(空白の軌跡)、講談社ノンフィクション賞(遠いリング)、大宅壮一ノンフィクション賞(リターンマッチ)と、主だったノンフィクション賞を軒並み制覇したつわものだ。スカウトという、一見訳の分からん職業の醍醐味や辛苦、喜びがストレートに伝わる作品である。プロ野球が嫌いな人にはちんぷんかんぷんであろうが、多少なりとも知識があれば面白く読める。
 「神様からひと言」も良かった。肩の凝らない小説だ。この作家の作品は、ついこないだ「なかよし小鳩組」をお勧めしたばかりだが、ユーモラスな文体と構成で人の喜怒哀楽を描写し、笑いの中でうるっとさせる力量はさすがである。荻原浩という作家に注目!
 黒川博行「切断」は警察小説。コテコテの大阪弁と、連続復讐殺人事件の謎とがいい絡み合いを見せ、スピード感もある。
 多岐川恭の時代小説は、あくまでボクの個人的評価だが、出来不出来の落差が大きいと思う。面白い小説はすごく面白いけれど、つまらん小説はとことんつまらない。今回はたまたま、そのつまらん方が2冊連続してしまった。
 「井上茂美」は、海軍大将でありながら、大戦の期間中、変わらず反戦の立場を取り続けた軍人の生涯を描く。米内光正首相と共に終戦工作を担った立役者である。人物は興味深いが、書き手が下手。人物像がイマイチ明瞭に浮かび上がらないし、ドラマチックな盛り上がりにも欠けるように感じられた。
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佐藤正午「ジャンプ」 icon
[キット評価:★★★★★]
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後藤正治「スカウト」
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[キット評価:★★★★★]
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荻原浩「神様からひと言」
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[キット評価:★★★★★]
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黒川博行「切断」
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[キット評価:★★★★☆]





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開催日 言いだしっぺ 内容
11月10日(火) パラドックス(関西支部) 京都紅葉撮影会(常照皇寺)
11月21日(土) パラドックス(関西支部) 京都紅葉撮影会(東山界隈)
11月28日(土) パラドックス(関西支部) 京都紅葉撮影会(吉田神社〜真如堂〜金戒光明寺)
12月5日(土) ゴン太(東北支部) 東北支部忘年会
12月6日(日) paul81(九州支部) 航空自衛隊新田原基地航空祭撮影会
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11、12月のお題は「名作の舞台」
映画、小説、マンガなどの舞台となった土地や、
印象的なシーンなどを、物語の印象を彷彿とさせるように撮ってください。
今月はお題がご大層なので、期間を2ヶ月間とします。
投稿枚数制限も設けませんので、随時提出してください。
 11月中に提出されたものを12月に、
12月に提出されたものを1月に講評します。

撮影期間:11/1〜12/31
提出期限:随時
投稿枚数に制限なし。
投稿規程は
こちら。よく読んでください。

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