天才キットの
☆ 1日1枚 

Fujifilm Finepix4500・・
千枚田 2003/06/23 MON
 昨日(もう一昨日か!)のSL下見には、弟子のネムちゃんが奥さんの猛獣トッシーと子怪獣を連れて付き合ってくれた。うちの子はもう成人して家を離れているから、子ども連れの旅というのは久しぶりだ。なんだか、ほんわかした気分になった1日だった。夕方ネム一家と分かれ、ボクはその足で愛知県の山奥、鳳来町まで行って、道の駅で車中泊、翌朝から四谷の千枚田を撮影した。
 日本全国「千枚田」と名のつく棚田は多いが、ここの千枚田は羊頭狗肉ではない。田んぼの枚数は1200以上あるそうだ。農耕従事者の高齢化や国の休耕政策で、やむなくお休みしている田んぼもあるが、それでも800枚以上が今も耕されている。日本有数の規模を持つ棚田なのだ。取材といっても、例によって田んぼに出ているおばちゃんたちとの立ち話がメインなので、撮影本数はたったの8本、これでは棚田シリーズが日の目を見るのはいつになることやら・・・。
 というわけで、帰宅したのは月曜日の午後11時。急いで日曜日の分の配信を終えたばかりだ。考えてみれば、1日1枚を2日もパスしたわけで、このメルマガを楽しみにしてくれている読者のみなさんには大変申し訳ないことだった。義理で受信してくれている読者の方々は、さぞやほっとしたことだろうが・・・。

【使えるワザ】今日は露出の話ではなく、構図の話をする。露出の話は「耳タコ」の読者が多いだろうから、ちょっとお休み。

 画面の右に見える小屋をポイントにした。棚田のような被写体は、何枚もの田んぼが形作る不規則模様だけでも絵になるのだが、1枚だけでなく、何枚もの写真で見せる場合には、それだけでは退屈してしまうので、絵に変化をつけた写真も必要になる。人物、樹木、野草など、さまざまな被写体があるので、それらをうまく画面に取り込むように工夫するといい。

 この写真では、その小屋を取り入れた。ただし、単に画面に入っていればいいというものではない。ポイントにするからには、それなりのおもてなしが必要になるのだ。この作例の場合は、鑑賞者の視線が自然にこのポイントに吸い寄せられるように、山の稜線が田んぼに写った影がこの小屋に向くような場所を選んで撮った。手前の畦道が直線なので、非常に強い存在感を主張している。実際、この畦道は邪魔なのだ。しかし、あるものを消すことはできないので、替わりに手前の、空を映した白く光る田んぼと、陰になった部分とを対比させ、その交点に小屋を持ってくるようにしたわけだ。苦肉の策だが、半分ぐらいは成功したと思う。
撮影データ
撮影日 2003/06/21
ISO感度 200
絞り値 F9.8
シャッター 1/168
露出補正値 0
WB オート
その他
バックナンバーは
「天才キットのフォトギャラリー」
に展示してあります。
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読者からのメールや質問やヤジ

sasaさんから
 以前質問に答えていただいたsasaです。その節はていねいな解説をありがとうございました。絞りやシャッタースピードの一段が露出補正の1だというのがわからなかったのです。たいへん参考になりました。

 今回も少し質問があります。「手のひらを使う」についてです。以前、全日本モトクロスを観戦に行ったときに、プレス関係者(雑誌などの写真を撮っている人)が手のひらにカメラを向けたり、すぐ近くの路面に向けたりを繰り返して、何かを確認しているようでした。その日はあいにくの曇り空で、雨こそ降りませんでしたが、かなり暗い日でした。彼が接写のために使っていたとは思えません。彼は何を確認していたと思われますか?彼に聞くのが一番ですが、仕事中のプロカメラマンだったので、近寄りがたかったのです。今回もよろしくお願いします。


返信
 上の「使えるワザ」で、今日は露出の話はなし、と言ったばかりなのに、sasaさんのご質問は、まさにその露出に関するご質問です。しかも、露出の話の中でも一番ややこしい「測光」のお話!今日の回答は長くなります!

 「測光」、文字通り光の強さを測る仕組みです。カメラの露出計は、この光の強さを測っているわけですが、残念ながら、光そのものの強さではなく、光がいったん被写体に当たって反射してきた光、つまり間接的な光の強さしか測ることができません。たとえば、画面の中に黒や緑や赤といった、反射率の低い色の被写体が多くを占めている場合、この間接光は、実際に被写体に当っている光よりかなり弱くなってしまっています。逆に、白や黄色などの反射率が高い色は、当たっている光の大部分を反射してカメラに届けてくれます。

 こういうことがあるので、露出補正という面倒臭い作業が必要になるのです。
 カメラの露出計は、入ってくる光をすべて「18%グレイ」という灰色に描写するように設計されています。試しに、真っ黒な画用紙と真っ白な画用紙を用意して、お手持ちのデジカメでそれを撮影してみてください。画面全体で真っ黒な紙を撮った写真と、画面全体で真っ白な紙を撮った写真は、あら不思議、まったく同じ写真になってしまいます。写っているのは、やや白っぽい感じがする灰色、それが「18%グレイ」というわけです。

 普通、写真を撮影する場合、画面全体が真っ黒、真っ白ということはありませんね。いろいろな色が混在しています。カメラの露出計は、画面内のそれらの色の平均値を計算して露出を決めるのです。平均の取りかたには「平均測光」や「中央部重点測光」などいろいろな種類があり、また、その計算方式もメーカーによって独自のノウハウがあるので、そのせいでカメラのクセというやっかいなものが発生するのです。

 しかし、反射光ではなく、被写体に直接当っている光の強さが測れれば、こういうカメラのクセや露出補正は必要ないということになります。その直接光を測るには、それなりの露出計を使う必要があるのですが、安いものではないし、カメラのクセと補正方法を知っていれば、必ずしも必要不可欠なものではないので、プロといえども持ってくるのを忘れる場合があるのです。sasaさんが目撃したそのカメラマンは、うっかりして露出計を忘れたんでしょう。

 さきほど、カメラの露出計はすべての色を「18%グレイ」という明るさにしたがる、と言いました。ということは、カメラに「18%グレイ」を見せてやれば、カメラの露出計は単体露出計と同じ値を計算するはずですね。「18%グレイ」を「18%グレイ」に写すわけですから、補正の必要はなくなるわけです。

 そのカメラマンが手のひらをレンズの前にかざしていたのは、手のひらが非常に「18%グレイ」に近い反射率だからなのです。別に、ピントなど合っている必要はありません。要は、ファインダー全面に手のひらだけが見える状態でシャッターボタンを半押ししてやれば、カメラは「18%グレイ」しか認識しませんから、そのときに表示された絞りとシャッタースピードが適正露出ということになります。ただし、このときに注意しなければならないのは、被写体と同じ状態で手のひらにも光が当っていなければ意味がないということです。被写体には太陽光がさんさんと降り注いでいる、自分は日陰から撮っている、というようなシチュエーションでは役に立ちません。

 乾いた状態のアスファルト道路は、カメラが測った露出を半段マイナスすると適正になると言われています。日本全国どこのアスファルトも同じというわけではないので、これは経験次第ですが、そのカメラマンはたまたま見えるアスファルト道路が露出測定に使えると考えたのでしょう。

 なお、カメラ屋に注文すると「グレイカード」というものを取り寄せてくれます。ただのボール紙に「18%グレイ」が塗ってあるというだけのバカげた道具ですが、プロはカメラバックに入れてますネ。手のひらよりは正確だし、誰かさんのように色黒であることを心配せずに使えますから・・・。
撮影会のお知らせ

参加希望者、現在4名。下見の結果に乞うご期待!
 今回の撮影会は大井川鉄道を走る蒸気機関車がメインです。下記の要領で参加者を募ります。関東方面からの足は、埼玉、都内と神奈川で各1ヶ所集合場所を設け、車でピックアップする予定です。その場所は参加希望者のご意向を伺いながら決めていくつもりです。現地に直接集合でも構いません。

 初心者を対象とした撮影会ですので、器材はコンパクトカメラやデジカメで十分です。もちろん、ある程度の経験者も歓迎します。申込み、お問合わせはこちらから。

          ■
SLのSは酒だがLはなんだ大会

 日時:7月12日(土)
 撮影場所:東海道本線金谷駅前
 集合場所:(現地)東海道本線新金谷駅前、(出発地)参加者に後日通知
 集合時間:(現地)午前10時、(出発地)参加者に後日通知

 参加費用:大枚3,000円(交通費、食費、車両費などの実費は割り勘)
 持参するもの:撮影器材(できれば三脚も)、雨具、入浴用品

 講評会:7月27日(日)午後6時(場所は参加者に後日通知)

その他:
▼コンパクトカメラでもなんでも、とにかく写真機を持ってくること。デジカメも可。
▼途中で温泉があったら必ず寄り道するのが決まりだからタオルぐらいは持ってくる。
▼三脚を持ってる人は必携。
▼フィルムカメラはリバーサルフィルムを使うこと。写真屋で「プロビアF」と言って買う。
▼何度も言うようだけど費用割り勘なので、貧乏人はよく考えてから参加すること。
▼JR金谷までJRで来られる方は:
 07:46 東京発ひかり143号で静岡、
 08:57 JR普通に乗り換え金谷09:29着 \5,980
など、いくつかの選択肢があります。