1年程前に図書カードを紛失して以来、図書館から足が遠のいていた。再発行の手続きが面倒だと思ったし、読みたい本はほとんど網羅したと感じていたからだ。ところが、こないだNHKで「蝉しぐれ」をたまたま観て、藤沢周平を読み直してみたくなった。このドラマ、8回だか10回だかの連続もので、そのうちのたった1回分(第何回かは分からない)を観ただけだっし、演出が平凡に感じたので続きを観る気持ちは起こらなかったのだが、数ある時代小説の中で、ボクは藤沢周平のなんとも言えないしっとりした文章が好きなのだ。それを味わってみたくなった。時代小説ではないが、庄野潤三のしっとり感に通じるものがあるように感じている。
というわけで、久しぶりに図書館に行った。カードの再発行はあっけないほどすぐにできた。ただし、目当ての藤沢周平はほんの数冊しかなかった。近頃は、こういう味で読ませる作家より、ストーリーで売る作家のほうが人気らしい。
3冊借りた。帰りがけに図書館の煉瓦の壁と窓を撮った。紅葉しているわけではないのに、陽射しが透けて輝く木の葉に秋を感じた。 |
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【使えるワザ】陽が当たらない陰の部分だし、赤い煉瓦の壁や木の幹、木の葉など、ほとんどのものがもともと反射率の低い「暗い」色だ。輝いているのはごく一部の木の葉だけという被写体である。
このまま露出補正なしで撮ると、カメラは闇雲に「明るく写そう」とするので、ただでさえマイナス補正が必要なのだが、この写真の場合、輝いている木の葉が命なので、もっと補正して周りを暗く落としてやらないと絵にならない。通常設定の-0.3から更に落として-1.0までマイナス補正をかけている。
コントラストは最高に設定してある。輝いている木の葉を目立たせるためだ。色を際立たせたい写真ではないので、彩度はニュートラルでいい。
こういう「なんでもない」被写体を絵にするためには、とにかく画像に何を語らせたいかを考えることが大切。最初に「ん!」と感じた印象、この写真の場合は「秋の陽射し」を整理することから始める。一体、何がボクの眼を惹きつけたのかを考えるわけだ。その後に、ただ漫然とシャッターを切るのではなく、景色のどこからどこまでを切り取るか(構図)を考える。最後に、受けた印象を強調するための各種設定を考えるという手順だ。 |